経歴とプロフィール


学歴

1960.4〜1964.3: 関西学院大学経済学部卒業
1964.4〜1966.3: 神戸大学大学院経営学研究科経営学会計学専攻修士課程修了
1966.4〜1969.3: 神戸大学大学院経営学研究科経営学会計学専攻博士課程単位取得満期退学

学位

1964.3: 経済学士(関西学院大学)
1966.3: 経営学修士(神戸大学)
     学位論文:「シュマーレンバッハとベームの計算価格論」
1990.7: 学術博士(筑波大学 博乙第611号)
     学位論文:「分権的組織の内部振替価格と利益配分に関する基礎的研究」


職歴

1966.4〜1969.3: 愛知大学助手 法経学部
1969.4〜1971.3: 愛知大学講師 法経学部(簿記論、管理会計演習 担当)
1971.4〜1983.2: 大阪府立大学助教授 経済学部(原価計算論、管理会計論担当) 
1983.3〜2004.3: 筑波大学教授 社会工学系(会計学概論、経営計画、管理会計学、生産管理論等 担当)
   筑波大学での所属教育組織:
   博士課程:筑波大学社会工学研究科/ 筑波大学システム情報工学研究科
   修士課程:筑波大学経営・政策科学研究科 
   学部課程:筑波大学社会工学類
2004.4〜 現在: 筑波大学名誉教授
2004.4〜2011.3: 目白大学経営学部経営学科 教授(管理会計学、生産管理、現代経済入門 担当)
2009.4〜2016.3: 名古屋商科大学大学院 グル―バルリーダープログラムと税理士養成プログラム 客員教授
         (Financial Accounting, Managerial Accounting, Lean Production System 担当)

大学での管理職歴

1989.4〜1991.3: 筑波大学 経営・政策科学研究科長
1994.4〜1996.3: 筑波大学 社会工学系長
2003.4〜2004.3: 筑波大学 システム情報工学研究科 計量ファイナンス・マネジメント専攻長
2004.4〜2008.5: 目白大学 経営学部長

海外での経歴

1972.10〜1973.9: シラキュース大学・ボーリンググリーン州立大学およびミシガン大学経営大学院の 客員研究員
1980.8〜1981.8: ニューヨーク州立大学バファロー校 経営学部の客員准教授(上級管理会 計、原価 価計算、会計学 担当)
1991.8〜1992.8: カリフォルニア州立大学ロスアンゼルス校 MBA 客員教授(管理会計、生産管理担当)
1996.4〜1996.9: ストックホルム経済大学の欧州日本研究所 客員研究員
2011.8〜2011.11: リナウス大学経営・経済学部の客員教授 (生産管理担当)


プロフィール

学歴・職歴・社会貢献活動・研究業績などについて個々の事績は、目次の項目に従って 箇条書きにリストアップされているので、このプロフィールでは人物と活動を口述的に 語ることにする。

研究テーマの10年ごとの推移

60年代: 60年代には、まず初めに関西学院大での学部時代には経済学部に籍を置き、 経済学のいわゆる「論・策・史」(理論・政策・歴史)はすべて学んだが、ゼミではケ インズの金融論を専攻した。次いで、神戸大学の大学院修士課程ではドイツの経営経済 学を学び、シュマーレンバッハを中心とする「分権的意思決定のための企業内部の計算 価格システム」を研究した。愛知大学に赴任した当初に、助手の間に1年間の内地留学を 授与され、神戸大学大学院で米国のバーナードやサイモンの「企業行動科学」も学ぶこ とができた。

70年代: 70年代に入ってすぐに大阪府立大学経済学部に転任したが、この年代の初め に米国に1年間、客員研究員として留学する機会を与えられ、主として「数学的意思決定 モデル(主に線形代数によるORモデル)」の研究に傾斜するようになり、管理会計との 関係では「情報システムとしての管理会計モデル」の方向を志向した。

80年代: 80年代の初めにも1年間、米国の大学に今度は客員教授として着任し、81年に 初めて米国の英文ジャーナルに「トヨタ生産方式」の論文を公刊した。筑波大学に転任 してからは、これを契機に80年代には日本のジャストインタイム生産方式から、さらに 日本初の管理会計システムとしてトヨタの原価企画・原価改善、パナソニックの社内資 本金制度、京セラのアメーバ方式などについて調査研究し、海外に次々と発表した。こ の頃、京都大学の淺沼萬理教授に触発され、日本の自動車産業の部品取引価格に関する 制度も研究した。

90年代前半: 90年代初めには筑波大学から博士号を取得したが、その内容のコアは修 士課程時代の「シャドウプライスによる内部価格システム」を深め、その後の「協力ゲ ーム理論による利益配分システム」から成る。(後者については、「累積的機会原価法 」と呼ぶ独自の利益配分法も考案した。)

90年代後半と2000年代前半: この頃には、筑波大学の博士課程に来た国費留学生たち と共同で、JITシステムのアカデミックな数学的モデルの研究と、原価企画や分権的経営 管理に関するアカデミックな統計的実証研究をたくさん行い、海外に積極的に発表して 行った。この頃は、大勢の博士課程院生とともに研究活動に邁進できたお陰で、門田の 筑波大学時代における黄金時代といえるであろう。

2000年代後半と2010年代
(1) ネットワーク組織の研究: この間は、「(市場に対して)オープンな企業間ネットワーク組織によるイノベーショ ンと、それを動機づける利益配分の仕組み(「インセンティブ価格」)」を研究してき た(2017年秋の英文著書として結実)。この研究は、これまでのJIT生産方式の研究と内 部計算価格システムのを総合して発展させたものである。その最大のオリジナリティは 、従来の市場価格ではなく新しく「インセンティブ価格」という概念を開発したことに ある。これまでの研究の集大成としてのライフワークでもある。

(2)「持続可能社会」構築のための「人間と自然との共生」の理念に関する研究:  近年の環境問題に対応しながら「持続可能な社会」の構築のためには、人間と自然と の関係をどのように見るべきか。京都議定書以来、「環境保全の持続可能な社会」に関 する社会哲学が「人間中心主義」から「人間と自然の共生」という理念に明確に転換し た。
 たとえば化石燃料を多用して自然環境を破壊するようなことをしないで、再生可能エ ネルギーを多用して持続可能な社会や企業を構築していくには、「人間と自然の共生」 という理念が有用だが、それはどのようなもので、どこから招来しているのか。私はそ のような理念の源流はヒンドゥー教の自然崇拝の信仰の中にあると考えた。そこで、私 はその思想を単に書物だけで調べるのではなく、その教義が生まれた地における今日の 実態も現地現物でぜひとも調査したいと思い、10年ほど前に思い切ってヒンドゥー教の 国の村や寺院にフィールドスタディを試みた。
 ヒンドゥー教では人間は、太陽の神、風の神、水の神、地の神、河の神、そして様々 な生き物(動植物)に宿る神を崇める信仰をもつ。これは一神教の世界とは根本的に異 なる「多神教」の世界である。このような教義の実践は、今日でもたとえば聖なる河、 ガンジス川の沐浴に見られる。
 このような自然崇拝の教義と実践は、「人間と自然との共生」という近年の環境保護 による持続可能社会の追及理念のベースになり、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマ スなど、様々な再生可能エネルギーの利用を鼓舞する社会哲学ともなり得るだろう。
 その後、私は時間がかかったが、この研究も少しずつ進めていき、海外の学会でも発 表するに至った(当ホームページ(HP)の「6.その他の海外講演」の「2014年7月スペイ ンにて(1)」参照)。さらに当HPの「海外での研究業績」にある英文論文Monden (2016) pp.101-131や、英文著書Monden (2017)の第4章、さらに同書第19章では、自然との共生 に関する「経営哲学」を展開している。

2つの主要研究テーマによる産業界と学界への寄与

(1)研究面とそれを生かした実務活動では、日本の自動車産業に関する研究と関連す る諸活動から貴重な実務的知識と経験を得た。ニューヨーク州立大学時代に米国のIndu strial Engineering協会(AIIE)から発表した論文(1981年)によって、米国の産業界と学 界にジャストインタイム生産方式を初めて体系化して伝えた。AIIEから出版した英文著 書Toyota Production System (1983年) は、今や米国で「JITの古典 」(JIT classic)と 呼ばれており、それは1984年に日本経済新聞と日本経済研究所の「日経・経済図書文化 賞」を受賞し、多数の国で翻訳出版されている。本書はその後、版を重ね、第4版は2012 年に米国の大手出版社Taylor & Francisから出版され、その中国語版も出版されている。 管理会計分野の研究としては、ここでも日本の自動車業界がオリジナルに生んだ「原価 企画」と「原価改善」の技法を1983年に世界で初めて体系化して発表した(登 能暉氏と の共著)。それを基にして、1991年には米国会計学会(American Accounting Associati on)の権威ある学会誌に発表できたことも、もう一つの学問的寄与ということができよう。
(2)さらに最近の研究は「オープンな企業間ネットワークによるイノベーションとイ ンセンティブ価格」(Open inter-firm network for open innovation by incentive pr ice)という英文書である。この研究は、従来の日本の自動車産業の系列メカニズムを超 えて、市場に対してオープンなネットワーク組織を提唱している。この著書の主なオリ ジナリティは、伝統的経済学の主流にある「市場価格」のメカニズムが働きにくいとこ ろで、「インセンティブ価格」という利益配分目的の新しい価格概念を作り出した点に あり、それは企業経済学における一つの大きな革新となっている。

海外の学界における主な活動

彼の学界における国際的活動は、日本での教職で大学を変わるごとにサバティカルを取 り、米国はニューヨーク州立大学バファロー校(1980〜81)やカリフォルニア州立大学ロス アンゼルス校(1991〜92)での客員教授や、さらに欧州でストックホルム経済大学(1996)で の客員研究員なども含んでいる。さらに、米国の生産管理学会(POMS)の理事や、米国 会計学会 (AAA)の管理会計セクションの理事も務めてきた。

日本の学界における主な活動:日本組織会計学会の創設

日本の学界では、日本管理会計学会の副会長を務めた。2000年8月には管理会計学会編 「管理会計学大辞典」(中央経済社)(2段組 総1000ページ)の編集委員長を務め、献 身的なコア委員であった原田昇・佐藤紘光・小倉昇の3氏とともに約6年間の歳月をか けてこれをまとめ上げた。この大辞典は、世界的に見わたしても類書はない。また同学 会の学会誌編集委員長も3年間務めた。これらの功績により、2010年に日本管理会計学 会の「特別賞」も授与された。
 しかし、学界における彼の最も特筆すべき活動は、日本の経営組織論や会計学の分野で は初めて国際的な「日本組織会計学会」(Japan Society of Organization and Accoun ting)というユニークな学会を創設したことにある。その編集委員長として、また会長 として、Japanese Management and International Studiesと称する英文の定期刊行物 を毎年、シンガポールの世界的大手出版社World Scientific Publishing Companyから 出版していく事業モデルを創り上げた。このシリーズ書は、組織論と管理会計に関する 研究成果を海外に発信し、世界の産業界と学界に寄与するという使命を持つ。さらに、 このシリーズ書を通じて若手研究者の育成も意図されている。このように産業界と学界 との両面における社会的寄与を果たすことが、彼の生涯を通じた志であるといってよい が、この学会の活動を支える諸氏との人間的な交流が最も大切なものとしているので、 このシリーズ書に執筆し、運営に協力していただける人々の参加が特に奨励されている。 なお、このシリーズは、国際的な学界で権威のある、Thomson Reuters社の学術データベ ースWeb of Scienceにも掲載されている。

産業界・社会への寄与

 実業界では、彼は1987年に日本の外務省傘下のJICA(国際協力機構)から、シンガポ ールにトヨタ生産方式を指導(技術移転)する専門家として派遣され、同国での専門家 養成や多くのメーカーの現場指導に従事した。さらに、1998年には同じくJICAからタイ 王国に戦略的コストマネジメント(原価企画と原価改善)の専門家として派遣され、こ れら日本発のコスト管理の技術移転に尽力した。このほか、中国政府、台湾政府、その 他の政府からも要請されてこれらの指導に赴いた(詳細は、このホームぺージ目次の「 2.政府機関の依頼による社会的活動」や「6.その他の海外講演・技術指導」を参照 されたい。)
 さらに、このほか海外の個別企業としては、大手製造業、特に自動車関係の民間企業 、GM、フォード、クライスラー、ダイムラー、ルノー、ボルボ、ボルボトラック、ボル ボ建機、(イランの最大の自動車メーカー)IKCOなど、挙げきれないほどの会社を指導 してきた(これについても詳細は、職歴での「6.その他の海外講演・技術指導」の項 を参照されたい)。 さらに、会計学の分野においては、2000年〜2003年の3年間にわたって、我が国の公認会 計士2次試験の試験委員の仕事にも従事した。